日本人の心から失われた「森林」 ― 映画『うみやまあひだ』が魅せる、伊勢神宮と鎮守の森

平成二十五年十月、伊勢神宮で第六十二回式年遷宮が催された。
式年遷宮は二十年に一度、古い社殿の隣に全く同じ様式の新しい社殿を建て神さまにお遷りいただく大祭である。日本で最も神聖な場所との名が高く、一生に一度は行きたいお伊勢さんと言われる伊勢神宮。しかし、その神性について取り沙汰されることは数あれど、伊勢神宮とその周りを囲む森林(鎮守の森)との関わり方が現代の日本にとって大きな意味を持つことはあまり知られていない。
十年間伊勢神宮を追い続けてきた、写真家・宮澤正明が監督を務めた日本初の4Kドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』は、その答えを探っている。
【画像は、コチラ→http://tocana.jp/2015/02/post_5798.html】
■うみやまあひだ
現代における日本国内の森林の現状は"ホンモノの森"とは言いがたい。
19世紀半ば、政府は造林を進めるために天然林を伐採し、代わりにスギやひのきなどの経済的に価値が高い針葉樹を植える拡大造林を行った。結果、維持管理しきれない荒廃した森林が増え、自然災害を巨大化させる要因にもなっている。
建築家の隈研吾は劇中で次のように述べている。
「一番残念なのは森の現状ですよね。【中略】(昔は)森に全すべて生活が依存していたわけですよ。今はエネルギーも材料も肥料も農業も全部森と切れちゃったでしょ」
「日本人の森に対する尊敬の念とか親しさが失われてしまった。この100年間で日本人が一番失ったものは森でしょうね」
また、森林だけではなくそこから流れ出る川も無関係ではない。
気仙沼で代々牡蠣養殖業を営む畠山重篤さんはこう語る。
「山からの養分が海に流れ、海の中にプランクトンと海草のもうひとつの森林があるんです。ここを鎮守の海と見立てたらどうかと」
「そうすると、その川の流域に住む人間が何を考えなければいけないのか分かってくるんじゃないかと思いますね。それがむしろ伊勢神宮に行って感じてほしいことですよね」
さて、式年遷宮という儀式に対しては外国人観光客からはこんな声を聞くこともある。
「二十年ごとに再建され、新しくなった社殿を見ても歴史的価値は感じられない」
などというものだ。しかし、その新しい=歴史的価値がないという認識については誤りがある。小説家の立松和平によると、日本には世界に誇るふたつのすばらしい文化がある。ひとつは伊勢神宮で、二十年に一度の遷宮をしながら千年以上前から始まったことが伝承され、現代でも一番初めの伝統が瑞々しく甦っていること。…
式年遷宮は二十年に一度、古い社殿の隣に全く同じ様式の新しい社殿を建て神さまにお遷りいただく大祭である。日本で最も神聖な場所との名が高く、一生に一度は行きたいお伊勢さんと言われる伊勢神宮。しかし、その神性について取り沙汰されることは数あれど、伊勢神宮とその周りを囲む森林(鎮守の森)との関わり方が現代の日本にとって大きな意味を持つことはあまり知られていない。
十年間伊勢神宮を追い続けてきた、写真家・宮澤正明が監督を務めた日本初の4Kドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』は、その答えを探っている。
【画像は、コチラ→http://tocana.jp/2015/02/post_5798.html】
■うみやまあひだ
現代における日本国内の森林の現状は"ホンモノの森"とは言いがたい。
19世紀半ば、政府は造林を進めるために天然林を伐採し、代わりにスギやひのきなどの経済的に価値が高い針葉樹を植える拡大造林を行った。結果、維持管理しきれない荒廃した森林が増え、自然災害を巨大化させる要因にもなっている。
建築家の隈研吾は劇中で次のように述べている。
「一番残念なのは森の現状ですよね。【中略】(昔は)森に全すべて生活が依存していたわけですよ。今はエネルギーも材料も肥料も農業も全部森と切れちゃったでしょ」
「日本人の森に対する尊敬の念とか親しさが失われてしまった。この100年間で日本人が一番失ったものは森でしょうね」
また、森林だけではなくそこから流れ出る川も無関係ではない。
気仙沼で代々牡蠣養殖業を営む畠山重篤さんはこう語る。
「山からの養分が海に流れ、海の中にプランクトンと海草のもうひとつの森林があるんです。ここを鎮守の海と見立てたらどうかと」
「そうすると、その川の流域に住む人間が何を考えなければいけないのか分かってくるんじゃないかと思いますね。それがむしろ伊勢神宮に行って感じてほしいことですよね」
さて、式年遷宮という儀式に対しては外国人観光客からはこんな声を聞くこともある。
「二十年ごとに再建され、新しくなった社殿を見ても歴史的価値は感じられない」
などというものだ。しかし、その新しい=歴史的価値がないという認識については誤りがある。小説家の立松和平によると、日本には世界に誇るふたつのすばらしい文化がある。ひとつは伊勢神宮で、二十年に一度の遷宮をしながら千年以上前から始まったことが伝承され、現代でも一番初めの伝統が瑞々しく甦っていること。…